「セブンスター」小江戸川越散歩574
腹筋というものを所有していた頃、自転車で四国を旅したことがあります。
土砂降りのあたりが暗くなったころ自転車を走らせていると軽トラに乗っている初老の方から「どこまで行くの?」と声をかけられた。
「中村市まで」と答えると「乗って行きな、自転車バラせる?」
分解すると組み立てる自信はなし。断り切れずご厚意に甘えて乗せてもらった。
案の定、翌日直せなくなり地元の自転車屋さんへ。
手際よく直してもらいお勘定。
「どうせ金ないんだろ?いらねーよ」
そんなわけにもいかないので払おうとすると店主が怒り出した。
「まいったな」と思い仕事場を見るとセブンスターが置いてあった。
お礼を言い、近所のタバコ屋さんへ。当時ひと箱200円のセブンスターを5個紙袋に入れてもらい自転車屋さんへ。
扉を開けて口やかましそうなおじさんへ紙袋をトス。
「それお金じゃないですから、ありがとうございました。」と言うと親父さんはニコッと笑った。
それは平和だった時代のお話なのです。